ペナン ACS のポリシー

ACS活動の方針

A. 本人の願いの実現のための支援を基本とする。
B. 自立を目指す。
C. ボーダーレスの考え方を基本に運営する。
D. 今後の地域福祉活動のモデル創りをする。

サービスの受け手は本人であって、親でも家族でも地域社会でもない。我々が提供するサービスの質は、支援を基本とする。往々にして、発言する機会の少ない、自ら主張することが困難な障害をもつ人たちは、親の願いが本人の願いと考えられたり、親自身が自分が代弁者と思いこんで本人たちを管理支配するということが、長い間当然のこととして行われていた。さらに、実際に障害者と関わるスタッフも、多くの場合誤った思いこみで彼らを指導し、訓練し、教育するのが自分達の役割だと思いこんできた。彼らの能力は不十分だから、それを十分に近づけるのが自分達の役割であるという発想から、彼らを管理支配してきた経緯がある。これらへの反省にたち、彼らの願いに自覚的に焦点を当てること、活動の中心は支援であることを、私たちの最も重要な基本と考えたのである。団体設立に先立って行った市場調査とも言えるニーズ等の調査も、実際には親や周辺者の願いの確認という方法を採らざるを得なかっただけに、今後への大きな課題という意味でも、これは第一におくべき事項であると考えた。繰り返しになるが、私たちの基本は、「守ってやる」「教えてやる」「~させる」という発想を可能な限り排除するところにある。

活動の目標は「自立」である。ただし、自立の概念は従来一般的だったものと異なる。従来、自立とは「他人の世話にならないで暮らすこと」と考えてきたが、これは誤りであるという認識に立っている。自立とは、自分の持ち味で生きることであり、周囲の人たちの価値観で生かされることではないというのが、私たちの考える自立の基本である。女性の自立とか、地域の自立とか、さまざまな自立が語られているが、それは過度に依存せず、周辺と協力し合うことを意味しているのであって、社会で孤立することを意味していない。

私たちは、自立とは助け合って生きること、と認識して、お互いに助け合って生きられることを目標にしている。従って、どの程度お金を稼ぐかとか、何が出来るかは直接関係ないと考えている。また、従順な人間でなく、「嫌と言える」「必要な自己主張が出来る」こともまた自立の条件である。自己を表現しながら助け合って生きられることを私たちの活動の目標にしている。それは、地域社会の構成員として生きるために基本的に必要なことだと考えるからである。



ボーダーとは、境目である。これをなくした発想でNGO運営をしようというのが私たちの基本の考え方である。人間の集まるところにはさまざまな境界線が生まれやすい。民族や宗教による境界線、性差別、障害があるかないかで設ける垣根は、誰もが知るところである。人間が似たもので集まり、お互いに助け合い、結果として排他的になるのは、ある意味で宿命といわざるをえないのかも知れない。また、教育にしても、ある意味で共通項で囲う分類主義は、効率的に考えると自然なことであるかもしれない。しかしその結果、各地で民族や宗教による紛争が起こっていることもまた事実である。私たちのNGOの挑戦は、それが極めて困難なことを承知で、一切の境界線をなくす発想での運営を実現しようというものである。福祉活動がサービスの提供側も受け手も共に暮らす社会創りである以上、これは避けて通れない重要な視点であると考えたからである。具体的には、私たちのNGOは、どの宗教や民族にも偏さず、スタッフも利用者も、全てを受容することであると同時に、それにとどまらず、関わった全ての人たちが助け合い協力できるようあらゆる努力をすることを基本方針とするということである。障害福祉領域において、幾つかの壁を取り除くことの重要性が説かれたことがあるが、そこでいわれた「心の壁を取り除くこと」の延長線上の考え方ということが出来る。そしてこれは、世界の平和にもつながる考え方であるといえよう。これについては後述する。



私たちは、アジア近隣諸国を視野に入れながら地域福祉のモデル創りを構想している。今後の地域福祉実践の望ましいあり方を模索し、やがてどの国や地域であれ参考に出来るモデルを構築したいと願っている。さまざまな社会背景や地域特性を考えると、モデルも多様でなければならない。私たちの活動は、そうした多様なモデルの一つを形成するものでありたい。モデルであるためには、次の3点をクリアすることが必要である。
  1. 理念構築の取り組みを継続する基本方針を堅持するだけでなく、その妥当性を含めて常に望ましい世界の姿、地域のあり方、福祉活動の目的との対比を自覚的に検討し続けること。これにより、現状維持的、保守的な運営になることを回避し、常に創造的取り組みであることがモデルであることの第1条件である。
  2. 手軽な規模と内容であること
    モデルというと多くの場合、多種の機能やそれを実現するための大きな建物・設備、さまざまな有資格の専門家チームなどが必要条 件と考えられがちである。しかし私たちは、地域的福祉実践はむしろ、そうしたものは必要ではなく、小さな地域でも真剣に計画すればどこでも実現可能な手軽な規模と内容であることの方が大切であると考えている。地域福祉はあくまで地域密着に意味がある。地域福祉は小規模に意味がある。極論すれば、どこでも誰でも本気で取り組めば出来るというのが、一つのモデルの基本である。大型、重装備型は、日常の地域福祉というより国家的もしくは広域的なものとして別の役割がある。従来、大型モデルが注目されてきたことへのアンチテーゼを提唱したい。
  3. 津々浦々にあることで、時代が変わるエネルギーをもつ国内に幾つかあるのはよいけれど、余り多くては困るといったいわば必要悪的な発想の存在でなく、全国至る所にあればあるほど、その地域社会が力を得、それらが連携することによって社会が変わり時代が変わるエネルギーを持つものであることを、モデルであることの条件の一つとする。

(中澤 健)

商業音楽の音楽賞